ベトナム、カンボジアで日本語を教えて10年
福岡支部 小浦 実
私は今、プノンペンにいます。もう10年近くインドシナで日本語を教えています。年間80%程度は現地に滞在し、今までに教えた子供達はベトナムで130人、カンボジアで120人位になります。
退職後、1年自宅にいましたが、することがなくて、精神的、肉体的にも良くないと思っていました。折よく、大学の同窓会があり、同級生から、ベトナムの中部高原の町Buon Ma Thuot(DakLak省)で日本語を教えてくれないかと誘われて、これがきっかけになりました。彼は当地で有機農業の指導(有機農業センター)をしており、その中に日本語学校がありました。私はそこで、2009年~2014年まで約6年、教えて、20015年から姉妹校のPhnomPenh Japanese Center(PJC) へ移って3年、現在に至っております。
今回はカンボジアの話をしたいと思います。皆さんはカンボジアと聞いて何を思い出されますか。アンコールワットでしょうか、クメールルージュでしょうか。カンボジアは国王がいる立憲君主の国で、面積が18万㎢で日本の約半分です。人口は1600万人ですから密度はとても少ないです。 あまり山がなく、平坦で耕地面積が広くて農業が盛んな国です。主な農産物は米、野菜、果物、コーヒー、胡椒などです。特に果物(ドリアン、マンゴー、パパイヤ、パイナップル、マンゴスチンなど)はとても美味しいです。首都はプノンペンで、王宮があります。東はベトナム、西はタイ、北はラオスに囲まれたメコンのデルタに発展した町です。アンコールワットはプノンペンから300kmほど北西にあり、中心都市はシエムリアップです。岩で作った寺院群は広くて大きくて一見の価値があると思います。まだの方は是非一度おいでください。
カンボジアは仏領インドシナであり、19世紀にフランスの植民地となりました。日本の進駐でシアヌーク国王が独立を宣言しますが、日本の敗戦で再び仏領となりました。しかし 1953年に独立しました。その後ポルポトのクメールルージュ(赤いクメール)による共産化による内乱で、数百万の人が亡くなったと言われています。国連の明石 康氏(日本人)のもとに現在のカンボジア王国が成立しました。プノンペンはじめ各地に亡くなった人の慰霊と今後このような残虐なことを起こさないための自戒の施設があります。日本人ボランティアの尊い犠牲もあったと思います。歴史を覗くと心が痛みます。
ここで私の1日の生活をご紹介します。起床6:00、散歩6:30~7:00、朝食(学生と食堂で)7:30~8:00、日本語指導の簡単な準備8:00~11:00、日本語指導11:00~14:00、食事・休憩(朝が早いので、昼寝する人が多い)14:00~17:00、日本語指導17:00~18:00、夕食の準備(皆で料理)18:00~19:00夕食で、学生といっしょに同じものを食べます。肉(豚・鶏)が多く、時々魚(メコンの川魚)も食べます.
生魚は食べません。野菜は豊富で、サラダにしたり、スープにします。具として果物(バナナ、パパイヤ、マンゴー、パイナップルなど)や香草(レモングラス、タマリンドなど)がよく入っています。慣れるまで大変でしたが、今は大丈夫になりました。
学生は食べるのがとても速く、大皿に盛ってある料理を取って、スープをご飯に注いで少しのおかずでご飯をたくさん食べます。こちらでは「いただきます」、「ごちそうさま」と言う習慣がなく私が言わないと誰も言いません。たぶんそう言う言葉がないのでしょう。食後 1時間ぐらい、学生とよく話します。大切な会話と心の触れ合いの時です。お金の事、両親・家族の事、恋人のことなどたくさん出てきます。自宅に招待されたり小旅行に連れて行ってもらったりしたことがあります。
学校の基本期間は6ケ月でN4(日本語能力試験にて)が目標です。漢字は300字教えています。3か月ぐらいすると、片言の日本語で、色々話しかけてきます。学生が少しずつ上手になっていくのを見るのは楽しみです。大げさじゃないですが、人間性の向上にも努めております。学生の親から「子供の態度や言う事が変わってきた」と言われるのを聞くと苦労のし甲斐があったと感じます。
カンボジアはまだまだ貧乏な国で、充分に教育を受けていない子供がたくさんいます。日本語の会得を通して、個人の発展と人間形成に役立ってくれればいいと思っています。学生は社会に巣立っても日本との関りを持とうとしますので、日本との懸け橋になってお互いの国が良い関係で発展すれば、いいなぁと思っています。
カンボジアもベトナムも子供が多いです。日本の事を考えると、羨ましい限りです。東南アジアは人口が6~7億人とも言われており、発展の余地がまだたくさん残っております。今後、日本はこの地域に深く関わっていかねばならないと思います。両国の若人に期待したいです。
(筆者 中央)
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