2020年度の支部総会は、コロナウイルス感染症対応のため中止と致しましたが、
アステラス製薬様より例年支部総会でお話しいただいておりました近況報告をご寄稿いただきました。
アステラス製薬からの近況報告―支部総会での挨拶にかえて
アステラスは発足から15年が経ちました。おかげさまでアステラスはリーディングカンパニーとして医薬品業界の発展をけん引し続けることができております。これもひとえに、諸先輩方が築き上げてこられた基盤のおかげと思っております。この場をお借りして、厚く御礼申し上げます。
【環境変化】
この15年間で環境は大きく変化しております。特に昨今は世界中で歴史の転換点ともいえる大きな変化が発生しております。国際社会においては、英国のEU離脱が現実のものとなり、一方長引く米中貿易摩擦は一段と深刻化し、政治の混迷が社会に大きな影響を及ぼしています。
ESG投資への注目度の向上、サステナビリティーへの関心の高まりなどを受け、「社会の持続性に対する企業の在り方」に関して、株式市場や世間からの期待や注目が高まっております。とりわけ気候変動は、長期的な企業活動において重要な意味を持つようになり、世界最大の資産運用会社ブラックロックは出資先企業のCEOに宛てた2020年の年次書簡で、気候変動を投資戦略の中心に位置付ける方針を示しております。
医薬品業界に目を移しますと、医薬品価格に関する政策議論が世界中で行われており、薬価引き下げの圧力が強まっております。一方、遺伝子治療・細胞治療など新たな治療ソリューションをはじめ、ヘルスケア技術やサイエンスの進展は絶えることなく続いております。
【アステラスの業績】
このような環境下、アステラスは、1月31日に第3四半期連結業績決算を発表しました。売上収益、コア営業利益/四半期利益とも昨年10月に発表した修正業績予想に対して順調に推移しており、その達成に自信を深めています。XTANDI、ゾスパタ、ミラベグロンの売上が前年同期と比較して合計で650億円近く増加しているほか、昨年日本で発売したイベニティも大きく伸びました。新製品の立ち上げ、重点後期開発プロジェクトおよびPrimary Focusへの投資もしっかりと継続しています。2019年度の年間配当につきましては、2018年度から2円増配の一株当たり40円にできることを予想しております。
【アステラスの取り組み】
2019年度は、2018年に発表した中期計画CSP(Corporate Strategic Plan)の3つの戦略目標に沿って、多くのプロジェクトを推進することができました。
まず、戦略目標1の「現行の取り組みの強化 -製品価値の最大化-」について紹介します。Proof of Concept (POC) 取得後の重点後期開発品では、以下に述べるような規制当局への申請および承認取得、新製品の発売など多くのマイルストンを達成しました。
エンザルタミドは、米国において転移性去勢感受性前立腺がんに対する追加適応の承認を取得し、中国では、転移性去勢抵抗性前立腺がんに対する治療薬として承認を取得しました。
エンホルツマブ ベドチンは、転移性尿路上皮がんに対する治療薬として12月に米国FDAから迅速承認プログラムに基づく承認を取得し、新発売しました。
ロキサデュスタットは11月に日本で新発売し、透析期の腎性貧血に対する新たな治療選択肢となりました。
次に、戦略目標2の「Focus Areaアプローチによる価値創造」に関する主な成果を述べます。1月に米国のバイオテクノロジー企業Audentes社の買収を完了しました。Audentes社のケイパビリティを、過去に外部から獲得したアセットを含むアステラスに既にある研究開発アセットと組み合わせることにより、遺伝子治療領域におけるリーディングポジションを確立し、各プログラムの開発を加速していきます。
12月末にはXyphos社というバイオテクノロジー企業も買収しました。Xyphos社の技術基盤と、アステラスのユニバーサルドナー細胞技術とを組み合わせることで、次世代高機能細胞の創製に向け、プログラムを前進させていきます。
これら以外にも、10月にはPandion社、1月にはAdaptimmune社との提携契約を締結しました。アステラスのPrimary Focusである抗原特異的免疫調節とがん免疫における取り組みがさらに前進していくことを期待しております。
最後に、戦略目標3の「Rx+プログラムへの挑戦」ですが、2019年度にRx+によって実現したい社会やRx+によって提供する価値、およびこれに紐づく事業領域を定めたRx+ストーリーを作成しました。科学的根拠に基づくヘルスケアソリューションによって、心身ともに健康に、自分らしく生きることができる社会の実現を目指し、Rx+が取り組む重点分野や優先順位を特定しました。Welldoc社とデジタルセラピューティクスに関する戦略的提携を行うなど、Rx+における各プログラムも着実に進んでいます。
【結び】
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界的な広がりを見せる中、社友会におかれましても、今般の社会的状況に鑑み支部総会中止等の大きな判断を余儀なくされ、役員・会員の皆様のご苦労と落胆もさぞやと推察いたします。
アステラスは、社員とそのご家族の感染リスクの軽減に努めてまいります。そのうえでアステラスの社会的使命である、医薬品の安定供給・研究開発の継続・品質管理・法令対応・安全管理・情報提供を続けていくために、事業継続計画対応業務として会社から指示を受けた者が、厳重な感染防止対策のもとで、出社・外出を含む必要な活動を継続いたします。COVID-19診断、治療、予防法開発にかかわる各国政府からの要請に積極的に協力してまいります。
2020年度は、現行CSPの最終年度です。CSPで定めた戦略目標とその先の持続的な成長実現に向けて、あらゆる局面において倫理観と誠実さを持って、患者さんの健康に貢献していく所存です。どうぞ引き続き、皆様の変わらぬご指導、ご鞭撻をよろしくお願いいたします。
以上
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